木目にうっとり、山中漆器と自然に触れる1日【うつわ巡りの旅vol.11】

うちる編集局スタッフが、日本全国のうつわの産地を訪ねる旅「うつわ巡りの旅」。

今回は、山中漆器の産地・石川県加賀市を訪れました。

町の真ん中を流れる大聖寺川に沿って、美しい自然や街並みとともに育まれてきた伝統文化は、時代に合わせて使いやすいものへと進化しています。

この旅では、山中温泉街の気になるスポットを巡りながら、3代に渡って山中漆器の「木地」を作る「白鷺木工」を訪ねました。

CRAFTOUR(クラフツアー)で工芸に触れる

11月初旬、この日はとってもいいお天気の秋の日でした!

石川県では紅葉の季節にはまだ少し早いですが、色づき始めの木々に期待しつつ、まずは「CRAFTOUR」へと向かいます。

まず立ち寄ったのは、「CRAFTOUR(クラフツアー )」。
店内に入ると、洗練された雰囲気の空間に、山中漆器を中心とした工芸品がたくさん並んでいました。

古いものと新しいものが融合していて、スタイリッシュでかっこいいです。
これから伺う白鷺木工の器もあります。

CRAFTOURは、ただのセレクトショップではありません。

ツアーの名の通り、事前予約制で山中漆器の制作現場を見学できるツアーを行なっています。

ツアーは「木地挽き」「漆塗り・蒔絵」「成形・塗装」の3つのコースが選べます。
木地挽きコースでは、白鷺木工も見学できますよ!

「山中PORTAL」でスパイスカレーランチ

次の目的地は、CRAFTOURのすぐお隣!カフェ「山中PORTAL」です。

2020年11月にオープンしたばかりの「山中PORTAL」は、フルーツサンドやマリトッツォのテイクアウトが人気のカフェです。
平日限定でランチメニューも提供されています。

店内はこじんまりとしつつも開放感のある雰囲気。
古道具やドライフラワーなどがディスプレイされ、映画の中に入り込んだようなノスタルジックな空気が漂っています。

ひとりで落ち着いて過ごせるカウンター席もあるのが嬉しいですね。

ランチプレートは、グリルサンドのセット。
選べるメニューから、スパイスカレーをチョイスしました。

エスニックなスパイスの風味に、柔らかいチキンがほろほろととろけます。
おいしくてペロリと食べきりました。

お腹も満たされたところで、いよいよ「白鷺木工」へと向かいます!

全国の産地の信頼を集める木地屋「白鷺木工」

山中温泉の中心部から、山の方へと車を走らせます。
細い道の先に「白鷺木工」はありました。

到着してまず目に入るのは、ところどころに木くずや木の粉が見える大きな工場。
工場の奥からは、木を削るような機械の音が聞こえてきます。

この工場の中で器が作られているのか〜!と、ただよう木の香りとともに、わくわくしてきました。

工場の向かいには、今年新しくオープンしたというギャラリー兼直売所もありました。

この日案内してくれたのは、白鷺木工3代目・戸田義治さんの娘さんである末広千春さんです。

5年ほど前に立ち上げた自社ブランド「SHIRASAGI」は、主に末広さんが企画やデザインを担当しています。

「普段使いのしやすさが、いちばんのポイント。実際に手にとって使ってみてほしいです」

実は私もSHIRASAGIの「イロハ椀」を家で使っている1人です。
かわいいだけでなく、軽くて持ちやすく、自然と毎日使う器のスタメン入りを果たしています。

白鷺木工は、器の「木地」作りが専門の木工所です。

山中漆器だけでなく全国各地の器の産地で、白鷺木工の木地が使われています。

現在まであらゆるメーカーのたくさんの形の木地を作っていく中で、やはり手に馴染んで使いやすいのはシンプルな形だと気づいたのだそう。

山中で作られる木地は「縦木取り」が大きな特徴です。

他の産地では、木の方向に沿って横向きで取られる木地がほとんど。
横木取りのほうが、1本の木からたくさんの器を取れるので、効率が良いのだそうです。

それでも、全国から縦木取りの白鷺木工に木地のオーダーがくる理由は、本来の木の目に沿っている丈夫さと、見える木目の美しさ、そして技術の高さにあります。

工場の外には、丸太がゴロゴロ。
この原木が、あの美しい器になるんですね。

では、いよいよこだわりの「木地」を作る現場を見学させていただきます!

工場に入ってまず目に入ったのは、ギュイーンと大きな音を立てながらゆっくり動く大きな機械。
丸太の原木を、輪切りにスライスしています。

輪切りにした木に、器の大きさの線「けがき」が描き入れられました。
その木ごとの木目の特徴に合わせて、位置どりをしていく、長年の経験が必要な作業です。

年輪の木目が、すでに美しい模様になっていますね。

「けがき」に合わせてカットし、さらに帯のこで面取りすると、いよいよろくろで削る作業が始まります!

木片を、カチッと機械(旋盤)にセット。
まずは、外側を削る工程です。

動き始めると、すごいスピードであっという間に器の形に削られていきました!

工場内の別の部屋には、全国各地からオーダーのある器が、仕上げ前の状態でたくさんストックされていました。
すべてオリジナルで、違う形なのだそうです。

1~3ヶ月かけてしっかり乾燥させたのち、形を仕上げていきます。
おおまかな形は機械で作りますが、最後の仕上げは手作業。

長年の経験や感覚が、均一で美しい器を作り出します。

削るときに使う刃物も、職人さんがそれぞれ自分の使いやすさに合わせて工夫しているのだとか。

同じ機械・同じ道具を使っても、削り方やスピード、器の仕上がりは同じにならないそうです。

山中漆器の特徴を大切にしながらも、現代のニーズや環境に合わせて新しいものをつくっている白鷺木工。
まだまだ新しい商品も企画中だとか。

末広さんも
「私たちでは思いつかないようなおしゃれな使い方をSNSで紹介してくれて、それを見た人たちからたくさん問い合わせがきたこともありました。使う人の声がいちばんだと思うので、どんどん取り入れていきたい」
とおっしゃっていました。

ギャラリーに工場見学、たくさんのお話を聞かせていただき、とても充実した時間でした。

削りたての木の香りに後ろ髪を引かれつつ、次のスポットへと向かいます!

川沿いの遊歩道・鶴仙渓をぶらり

山中温泉エリアのグルメと工芸に触れたあとは、自然と街並みも楽しみに行きましょう!

山中温泉は、大聖寺(だいしょうじ)川沿いに温泉旅館やお店が連なっている地域です。川には、あやとりのような形をした橋「あやとり橋」が掛かっています。

川沿いには遊歩道が整備されていて、川のほとりを歩けるようになっています。
渓谷は「鶴仙渓(かくせんけい)」と呼ばれ、石川県内でも人気の紅葉スポットとして毎年たくさんの人が訪れます。

川沿いの遊歩道から黒谷橋へと登っていくと、次の目的地「東山ボヌール」に到着です。

「東山ボヌール」で、しっとり優しいカフェタイムを

東山ボヌールは、2010年に旅館だった建物を改装してオープンしたカフェレストラン。
その佇まいからして、通りすがりでも「なんだか良い雰囲気」「気になる」「入ってみたい」という興味をそそるお店です。

ボヌール(bonheur)とは、フランス語で「幸せの時間」という意味なんだそう。
その名の通り、漂ってくる香りや店内の雰囲気、お料理やケーキにも、それぞれの幸せが詰まっています。

ランチは平日でも予約でいっぱいになることもあるので、予約してからの来店がおすすめです。

この日は、2階のカウンター席で「森のケーキ」とコーヒーのセットをいただきました。

ドライフルーツがたくさん詰まった森のケーキは、コクのあるコーヒーとの相性が抜群。
大きな窓から見える景色も相まって、とても美味しかったです。

大きな窓辺で緑に癒されながら幸せな時間を過ごした、あっという間の1時間でした。

ほっと一息ついたところで、そろそろ駐車場へ。
帰路は、黒谷橋を渡り山中温泉の街中を散歩しながら戻ることにしましょう!

表通りも裏通りも魅力満載の山中温泉街

山中温泉の裏通りは、昔からの商店街が連なる、山中の人々が暮らす住宅地です。
裏通りを抜けて表の大通りに出ると、総湯(地区の中心にある共同浴場)や飲食店が立ち並び、観光地の雰囲気が出てきます。

山中温泉の総湯「菊の湯」は、1,300年前に山中温泉に最初に湧き出た温泉を継承している公衆浴場です。

総湯の周りでは、地域の人たちが談笑していたり、観光客が写真を撮っていたりと、思い思いに時間を過ごしていました。

あたたかい場所だなぁ、次に来たときはゆっくり温泉に入って帰ろう〜と、ほっこりした気分を味わいながら、駐車場へと向かいました。

山中温泉の街と自然、伝統の漆器に触れる旅

今回は、白鷺木工の伝統と技に触れ、その伝統を育んだ山中温泉エリアを探索しました。

山中漆器といっても、職人さんは白鷺木工のように木地屋さんだけではありません。

漆を塗る職人さん、その漆に貝がらや金箔などで加飾する職人さんなど、たくさんの工房や職人さんの手を経て、ひとつの器ができあがるのです。

さらに、山中温泉エリアは、漆器だけでなく九谷焼の産地でもあります。
もっともっと山中の伝統工芸の魅力に触れたい!と、思わせてくれる場所でした。

今回訪れた白鷺木工の器は、こちらからもご覧いただけます。

白鷺木工 一覧ページ

ぜひ、シンプルで使いやすい形と、美しい木目に注目してみてくださいね!

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