今回は美濃焼の町として知られる岐阜県土岐市・多治見市へ。
100年の伝統を誇る「カネコ小兵製陶所」を訪ねました。
1,300年の歴史と伝統を誇る美濃焼。
良質な燃料や原料に恵まれ、日本の陶磁器生産量の5割以上が周辺でつくられています。
特に今回訪れた岐阜県土岐市・多治見市は、製陶所がぽつりと建ち、穏やかな雰囲気をもつ町。
ゆっくりと時間が流れる土岐市で100年あまりものづくりと向き合ってきたカネコ小兵製陶所の伊藤ご夫婦とお会いし、美濃焼の魅力を見て触れて楽しみました。
目次
うつわ巡り&カフェ巡りをする1日のスタート!
1日のテーマは、「うつわとカフェ巡りを通して、実際に触れて見て楽しむ」こと。
思わず顔がほころぶような素敵な体験をしたいと電車の中で1日の流れを再度思い浮かべてスタートです。
土岐市駅に到着
まずは土岐市駅から旅のスタート!
「カネコ小兵製陶所」までは歩いて1時間ほどでしたが、自然を感じながらゆっくりと向かいます。
町の中心を川が流れ落ち着いたゆったりとした雰囲気。
訪れた日は快晴でした!
青空と山の深い緑が一層引き立つ景色です。
散歩の途中で、まずは腹ごしらえに朝食探しに。
地元でも人気の「米粉パン専門店 cafeまごころ米て」さんへ。
贅沢モーニングセットをいただき朝から大満足です。
米粉を使っているだけあって、中はもっちもち。
特に米ワッサンのもちもち感と甘い味わいが絶妙でした。
いよいよ、「カネコ小兵製陶所」へ!
お腹も満たされたところで、「カネコ小兵製陶所」へ向かいます。
細い路地を抜けた先に製陶所が見えました。
窯元とギャラリーが隣接しています。
今回話をお伺いしたのは、3代目社長の伊藤克紀さん久子さんご夫婦。
「日常で使える食器を」という想いでブランド「ぎやまん陶」「リンカ」などを製作されています。
今年で100年という節目を迎え、伝統を大切にしながらも新しい試みやうつわづくりへの挑戦を続ける「カネコ小兵製陶所」さんにたっぷりとお話を聞かせていただきました。
まずはうつわの見学からスタート。
製陶所の隣にはギャラリースペースが併設されています。
そこで、毎月第一土曜日に一般のお客さん向けの販売も行っています。
古民家に花が添えられ趣ある雰囲気です。
こちらは「リンカ」。
盛った食事がしっかりと際立つようシンプルなデザインが魅力です。
手作り感のあるあたたかみが1つ1つの器から伝わってきます。
インテリア界で有名なニューヨークのインテリアショップ・Roman&William Guildで取り扱われ、併設のカフェで提供する食器にも使われるほど。
まるで花が咲くかのようなデザインに心が掴まれます。
黒練はシンプルさに重厚感が加わる印象。
色合いひとつでぐっと雰囲気が変わるのも魅力です。
夏には涼しげなブルーが人気だそうです。
こちらはぎやまん陶。
色合いは、実物で見るとより一層深みを感じられ、一瞬で虜に!
角度や明るさによって色合いが変わり、ずっと見ていても飽きません。
まるでガラスのような透明感です。
そしてカロリー茶碗という面白いうつわも。
当初ぎやまん陶がなかなか売れないときに、
「どうしたら身近に感じてもらえるか?」
「ぱっと手に取ってもらうには?」
ただの茶碗だと面白くないから健康志向なスタイルに、と思いついたのがこの茶碗だそう。
遊び心あふれる発想にうつわをより身近に感じられます。
伝統にちょっとした斬新さや新しいものを取り入れていく姿勢を大切にしているそうです。
つづいて窯元を見学。
成形は外部へお願いしているため、運ばれたものをまずは素焼き窯に。
その後、注文会社ごとに分けられた「素焼き」が順に並んでいます。
「小兵」の裏印を押して施釉工程へ。
スタッフの方々が釉薬を塗り仕上げている工程を見学しました。
1つ1つ丁寧に釉薬をつけていく様子はまさに職人技。
ぎやまん陶の製造過程では、縁だけ薄くなったり色むらができないように、最初にすーっと一周釉薬を塗っていきます。
一方リンカについては色が褪せてみえると手作り感が出るのだそう。
緻密なこだわりを感じられます。
釉薬はうつわの種類や色によって1つ1つ調合の具合や組み合わせが違うのだとか。
釉薬は天然素材がほとんど。
自然の環境によっても絶妙に異なってくるため、原料のブレンドはまさにプロの技。
それぞれのうつわに合う釉薬の絶妙なブレンド具合を知り尽くした釉薬会社さんとの信頼関係で成り立っています。
釉薬の調合はもちろん、素材がとれる山や土の条件、温度設定、釉薬の塗り方、焼いた状態など、それぞれの工程が絶妙に重なり合って、美濃焼の伝統が引き継がれていることを実感しました。
こちらはぎやまん陶の工程。
この道数十年のベテランスタッフさんの手によって次々に釉薬が付けられていきます。
実はぎやまん陶、当初は100個のうち98個が不良品だったそう。
季節や窯の調子、温度によって、いまでも焼き上がりをチェックしたときに、「この色は違う……」と販売できないものもあるそうです。
”自分たちが本当に自信を持って届けられるものだけを”という妥協しない姿勢に、ものづくりへのこだわりを感じました。
施釉後は、1300度で窯で焼いていきます。こちらは焼く前。
順番に窯に入れていきます。
大きな窯に入れてこれからじっくり焼いていきます。
焼成終了後でも窯の温度は200度超え。
扉を開けると熱風が作業中のスタッフにも届き、夏になると暑さとの戦いになるそう。
美濃焼の伝統を受け継ぎながら、新しい試みも忘れないと笑顔で語る伊藤さん。
伊藤ご夫婦の息子で4代目の祐輝さんの想いもあり、ギャラリーで行っていたイベントをインスタライブで実施するなど、積極的に発信するように。
YouTubeでうつわについての発信も始めたそうです。
「でもやっぱり直接器を見て気に入ってもらうのが一番。『やっと来れました』『うつわに会いに来た』とお客さんに言ってもらえると嬉しい」と伊藤さん。
自分で作ったものを手に取ろうとわざわざ来てくれる、うつわが大好きな人が褒めてくれる、ということがスタッフのモチベーションにも繋がっているそうです。
気さくな伊藤さんのお話を聞き、ものづくりへのこだわりを知り、実際のうつわに触れ、私自身、何よりもカネコ小兵さんのうつわのファンになりました。
よりいいものを、より身近に、というシンプルな言葉に込められた強い想いが、1つ1つのうつわから伝わったひとときでした。
多治見へ移動し、「喫茶わに」でほっとひと休み
土岐市を後にして、電車で1駅、多治見市へ移動してきました。
駅から歩いて5分ほどの場所にある「喫茶わに」でほっとひと休み。
もともと時計屋だったビルをリノベーションした店内は、書店と喫茶店、レンタルルームが併設されています。
うつわがたくさん飾られた店内では、書店の本をカフェに持って読むこともできました。
30度を超える暑い日だったのでアイスコーヒーをオーダー。
駅の観光案内所でもらったフリーペーパーも一読。素敵なデザインの冊子が多く、でかけるのもワクワクしてきます。
古民家が並ぶ「本町オリベストリート」で陶器を吟味!
カフェで疲れを癒したあとは陶器屋やアンティークショップなどが並ぶ「本町オリベストリート」へ。
レトロな建物が並ぶほっとする通りです。
うつわ屋さんを巡ると、それぞれのショップに置かれている陶器の種類や味わいが異なることを発見。
それぞれのお店の方々がこだわりを持ってセレクトしている様子が浮かびます。
また、本町オリベストリートから少し離れた場所に「新町ビル」という建物がありました。
こちらは、築50年の空きビルをリノベーションして「陶磁器と地域の交流の場に」をコンセプトに、陶器に関するギャラリーやイベントが開かれるスペースです。
2階には美濃焼を中心に若手作家から変わったデザインの器まで、オーナーがセレクトした器が並びます。
4階には全国からセレクトした陶器や雑貨、服などを幅広く揃えるショップが。
独特な雰囲気ながらも、1つ1つの作品に想いが込められている個性派が揃います。
スタイリッシュなデザインから、シンプルな色合いのものまで、いつまで見ていても飽きないやきものがギャラリーのように並びます。
思わず好奇心が膨らみワクワクするような空間でした。
最後に「GOOD DAYS COFFEE」で旅の振り返りを
多治見駅から15分ほど歩いた場所にある「GOOD DAYS COFFEE」で甘いもの補給を。
スタイリッシュな雰囲気はひとりでも入りやすく、観光途中にふらっと立ち寄れそうです。
上質なコーヒー豆を使う味わい深いコーヒーは深煎りと中煎りと2種類から選べます。
深煎りコーヒーとベイクドチーズケーキをチョイス。
コーヒーのがつんとした深みと、ほどよい甘さのチーズケーキの組み合わせを楽しみながら1日の振り返りを。
「カネコ小兵製陶所」さんでものづくりへのこだわりを感じ、たくさんの美濃焼に触れ、おいしいものに触れ。
まさに「触れて見て楽しんで」を体感した1日でした。
今回ご紹介したうつわは、こちらからご覧いただけます。
お気に入りのうつわで、毎日の食卓を楽しめますように。