やきものの町・笠間で感じる新しい息吹【うつわ巡りの旅 vol.5】

今回訪れたのは、やきものの町として親しまれる茨城県笠間市。

地元出身の陶芸家・中野明彦さん(以下、中野さん)は、自然豊かな笠間の風土を愛し、のびのびと楽しみながらものづくりに励んでいます。

笠間市はアートな街歩きができることでも人気です。

今回は、中野さんの工房見学とともに、観光名所もドライブを兼ねて巡ってきました。

友部サービスエリアで朝ごはん

笠間市内をいろいろと巡ろうと計画していたので車を利用して向かいました。

笠間市の中心地へは、北関東自動車道の友部ICを出て国道355号線を走ること約15分。

東京方面から向かう場合は、常磐自動車道から北関東自動車道に入るルートになりますが、常磐自動車道沿いにある友部サービスエリアには、ここでしか味わえないグルメがあるので、ぜひ立ち寄ってほしいスポットです。

こちらが下り方面の友部サービスエリア。
店内にはお土産コーナーやフードコートがあり、スターバックスコーヒーなども併設されています。

下り方面の友部サービスエリアにはここでしか味わえない「納豆ドッグ」があります。
2021年で15周年を迎えた納豆ドッグは、パンにウィンナーとたっぷりの納豆がサンドされたB級グルメです。

納豆ドッグ初体験の方には3種類あるメニューのなかでもシンプルな味わいが楽しめる「元祖納豆ドッグ」(360円/税込)がおすすめです。

こちらはスタッフさん絶賛の「チーズ納豆ドッグ」(390円/税込)。
オーブンでとろーりととけたチーズのマイルドな味わいと甘味のあるタレと和がらしで和えた納豆の組み合わせは絶妙でした。

このほか、「しらす納豆ドッグ」(410円)もあります。
ケチャップやマスタードはセルフ形式なのでお好みでどうぞ。

まずは笠間の町を見守る「笠間稲荷神社」にご挨拶

朝ごはん(朝ごパン?)を堪能したら、いよいよ笠間市へ。

笠間市にはいろいろと見どころがありますが、なにはともあれ「本日は宜しくお願いします」のご挨拶を兼ねて「笠間稲荷神社」に向かいました。

週末に出かけたのですが、早朝ということもあっていつもは人で賑わう参道ものんびりとした雰囲気。
参道脇には露店やお土産店などがあってそぞろ歩きも楽しいです。

「笠間稲荷神社」は、日本三大稲荷に数えられる有名な神社。

商売繁盛から縁結びまでたくさんのご利益が期待できるとあってパワースポットとしても知られています。
境内に一歩足を踏み入れるとなんとも心地良く、元気を分けてもらえるような空気が漂っています。

おみくじの種類もたくさんありましたが、中でも「きつねみくじ」はちょっと個性的。
しっぽ付近にある赤い紐を引くとお尻からにょろにょろとおみくじが出てきます。

おみくじを引いた後は、おきつね様を持ち帰ってもいいですし、境内に飾る方も多いようです。

ガラス工芸も見られる「常陸国出雲大社」へ

次に向かったのは笠間稲荷神社から車で約15分の自然の中に鎮座する「常陸国出雲大社」。

実はこの神社はこの後にお伺いする中野さんに「笠間に行くならぜひ行ってみてください」とおすすめしてもらった神社なんです。

奥まった場所にあるため一度は見逃してしまい、迷いながら到着。
拝殿は小高い丘の上に鎮座しています。

拝殿周辺に駐車場があるので、近くまで車で向かうことができます。
出雲大社の顔でもある巨大な注連縄(しめなわ)が特徴的な拝殿は階段を上がったその先に。

間近に臨む注連縄は圧巻のスケールです。

ちなみに「笠間稲荷神社」をはじめとした神社を参拝するときは二礼二拍手一礼が一般的ですが、出雲大社は二礼四拍手一礼がお作法。

四回拍手するのは四季を表しているという説や東西南北を守護する神様に敬意を示しているという説もあります。

拝殿でご挨拶を済ませた後は、少し下ったところにある「出雲館」という喫茶店を兼ねたガラス工房へ。

店内にはガラス工芸が並び、お土産として購入することもできます。

ちなみにこちらの工房長はなんと宮司さん。
宮司さんがつくる作品も見ることができるんですよ。

「笠間工芸の丘~クラフトヒルズ笠間」で腹ごしらえ

笠間市を代表する2つの神社を参拝した後は、やきものの町へ。
やきもの通りやギャラリー通りを散策する前に笠間芸術の森公園の中にある「笠間工芸の丘~クラフトヒルズ笠間」でランチをいただきます。

「笠間工芸の丘~クラフトヒルズ笠間」には笠間焼を制作できる体験教室のほか、お土産コーナーや陶芸品の常設展示などもあります。

「笠間工芸の丘~クラフトヒルズ笠間」の敷地内には登り窯があり、窯の内部や焼成過程の見学もできます。

店内にはさまざまな作家さんの作品を取り扱っていてお土産として購入も可能です。

お茶と食事ができるレストランもあり、この日はお天気も良かったのでテラス席でさっぱりとおそばをいただきました。おそばは手打ちでとてもおいしかったです。

笠間やきもの散歩

笠間工芸の丘~クラフトヒルズ笠間で無料の観光マップをもらい、工房やギャラリーを見て回るやきもの散歩を楽しみました。

「やきもの通り」は、代々続く窯元が工房を構える通り。

工房によっては見学可能なところがあり、また、陶芸教室を開催しているところもあります。
ギャラリーを構えている工房では作品を購入することもできます。

やきもの通りとギャラリーロードの中間地点にある「陶の小径」には、工房直営のショップが10軒ほど並んでいます。
作家さんや職人さんと触れ合うこともできる良い機会に。

ギャラリーロードには、各ギャラリーのオーナーやスタッフがセレクトしたやきものを販売するお店が点在しています。

「きらら館」では500名以上の陶芸家の作品を取り扱っていて、その数は1万点にも及びます。

地元・笠間焼をはじめ益子焼やその他全国各地の作家さんの作品も目白押し。
ひとりでゆっくりと買い物を楽しむ方をはじめ、ご友人と一緒に、またご家族連れなど幅広い客層で賑わっていました。

ギャラリーロードに点在するお店の中でも印象的だったのが「回廊ギャラリー 門」です。

特別展を行う時には、地元だけでなく都内や近郊の県からも大勢のお客様がいらっしゃるそうです。
古民家をリノベーションした店内は落ち着ける雰囲気で、作家さんごとに作品が展示されています。

中庭の両サイドの回廊にも常時80名程度の作家さんの作品が展示されています。
その奥には2週間おきに個展が替わるギャラリースペースもあります。

回廊に並ぶ作品を見ていて「素敵だな」と目に留まった作品は、この後に取材でお邪魔する中野さんによるものでした。

自然光を浴びていきいきとしているようなお皿の表情がとても印象的です。
お会いできるのがますます楽しみになってきました。

いよいよ中野さんの工房へ

神社でのお参りや、やきものの町を十分に堪能した後、いよいよ中野さんの工房へ。

温かく迎えてくださった中野明彦さん。

母屋の脇に併設した窯場には、焼く直前の作品たちがずらりと並んでいます。

中野さんがうつわをつくる上で大切にしているのは「使いやすい」こと。

作品として飾られるものではなく、日常のなかで使い続けてもらえる“レギュラー”になるようなものづくりを心がけています。

笠間を拠点にものづくりを行っていますが、笠間焼の特徴である赤土ではなく、主に白土を使っているそうです。

「笠間では特に“これが笠間焼だ!”という定義がないんですよ。それぞれの工房や職人が思い思いに表現するって感じで。自由で縛りがないからものづくりが楽しいんですよね」と、中野さん。

平らなプレートは中野さん作品の中でもいちばんの人気を誇っています。
大きめのプレートは、ごはんやパン、サラダなどワンプレート形式で食事を楽しむことも。

おうちで過ごす時間が増えて、お酒を自宅で嗜む方が増えたのに伴ってゴブレットなどの作品も注目されています。

こちらはぐい呑みグラス。
モダンな色彩センスも中野さんの作品ならでは。

また、欠けにくいように飲み口部分が丸みを帯びているのも特徴で、そのおかげでお酒の味もどこかマイルドに感じられます。

もてなしていただいたお茶の器やお茶請け、一輪挿しも中野さん作。

ちなみにお菓子は笠間名物の和菓子「栗満月」をいただきました。
優しく吹くそよ風を受けながら過ごすひとときはまさに至福です。

作品づくりへの熱い思いを伺ったあとは、工房にお邪魔して人気商品でもあるプレートが完成するまでの流れを見学させていただきました。

まずは土を練り、ろくろを引くための準備をしていきます。

平らなプレートをつくるときには、歪みがでないようにろくろの台に板を載せます。

ろくろを引いて土の癖をなくしていきます。
まるで生き物のように形が上下して思わずみいってしまいます。

プレートをつくるときに用いる目盛りは中野さんの手作りで長年愛用しているそう。

生のやわらかい状態だと平ら加減が分かりづらいため、ろくろから切り離す瞬間がもっとも緊張感を伴います。

ろくろから取り出して少し乾かしたプレートに鎬(しのぎ)を入れていきます。
等間隔で削っていくのでリズム感も必要な作業です。

鎬を削ってさらに乾かした後、底の部分の角を取って最終調整をしていきます。

「あまり薄くしても頼りなげになってしまうので、ある程度の厚みを持たせるようにしています」。
中野さんの作品には、日常使いをイメージした気配りを随所に感じることができます。

最後にイニシャル入りの判を捺して、プレートのかたちづくりは完成です。

かたちづくりを終えたプレートは素焼きをする前に一度天日に干します。
中野さんの工房の中庭には自然光が燦燦と注がれ、作品たちもどこか気持ちよさそうです。

素焼きや釉薬をかけて乾燥させた後の本番の窯炊きは月に2回ほど行われます。

中野さんの作品は、手作りならではの温かみにあふれたものばかり。

現状に満足することなく、常に新しいことに挑戦したいとも語る中野さんがいまやってみたいことは金彩加工だそう。

「ボディが黒でアクセントに金を組み合わせたうつわって高級感があっていいですよね。ただ金を使うと日常使いができなくなってしまうので、そこが課題です。でもいつか皆さんにお披露目できるように、諦めずに挑戦してみます」

中野さんのものづくりへの意欲はとどまることがありません。

夫婦それぞれが楽しむものづくり

中野さんのパートナーである智子さんもまた作家活動をされていて、和柄を使った雑貨づくりを行っています。

アトリエは母屋の2階。
やわらかな光に包まれた心地の良い空間です。

「月」というブランド名で、普段使いできるものを手作りしています。
こちらはティッシュケースで、取り外しのできるストラップ付き。

少量制作で同じものをつくらないので、まさに一点ものを手に入れることができます。

「original zakka 月」instagram

仲睦まじくつねに笑顔のおふたり。

中野さんの作品に温かみが感じられるのは、ご本人のお人柄が映し出されているからなのかもしれません。

お土産は茨城名物の「納豆」を

帰りにも友部サービスエリアに寄って、旅のお土産を探しました。

茨城県といえば納豆が有名ですが、このサービスエリアにはさまざまなメーカーの納豆が並んだショーケースがあります。
パッケージも個性的なのでお土産にぴったりです。

笠間市ならではのお土産といえば栗を使ったお菓子。
箱に入ったお土産のほかに個包装のものもあるので、自分のおやつにもぜひ。

あっというまの1日でした

笠間市は、街全体が優しい空気に満ちていて安らぐことができました。

その空気感はどことなく中野さんの作風にも表れているように感じています。

やきもの通りやギャラリーロードは、すべてを見て回ることができなかったので、ドライブを兼ねてまた近いうちに訪れたいと思っています。

B級グルメもたくさんありそうなので、次回は食の旅も満喫できるプランを計画中です。

今回ご紹介した、中野明彦さんのうつわは、こちらからご覧いただけます。

中野明彦 一覧ページ

お気に入りのうつわで、毎日の食卓を楽しめますように。

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