小石原で「用の美」を肌で感じる窯元巡り【うつわ巡りの旅vol.9】

350年以上の焼き物の歴史がある、福岡県朝倉郡東峰村の小石原を訪れました。

ほんのり涼しい風が吹いていて絶好のドライブ日和。
福岡市内から車で1時間半の旅です。

小石原(東峰村)の行き方
車の場合:福岡市内から高速で1時間 
杷木で降りて20分
電車の場合:博多駅からJRで約2時間 
新飯塚駅乗換⇒田川後藤寺駅乗換⇒筑前岩屋駅 

今回は4つの窯元と、小石原の観光スポットを巡っていきたいと思います。

道の駅小石原からスタート

朝8時に家を出発して9:30頃、道の駅小石原に到着。

果物狩りで有名な朝倉近郊で立派に育った、果物や野菜がお手頃価格で購入できます。

メロンが680円はお得すぎる・・・!

道の駅のなかには小石原の窯元の作品が展示されていて、まるで美術館のよう!
お気に入りのうつわを購入してもいいですし、ここでうつわを見て気になった窯元を訪れるのもいいですね。

翁明窯元の鬼丸さんを訪ねに

さて、まず訪れたのは、小石原焼でもトップクラスの人気を誇る翁明窯元です。

こちらでは2代目の鬼丸さんからお話を伺うことが出来ました。
子どもの頃からうつわ作りを間近で見て育った鬼丸さん。

大学は東京藝術大学に進まれましたが、はじめから卒業後は地元に帰ってくるつもりだったそうです。
東京で洋食器を見る機会が多かったため、うつわ作りに生かせるものがないか常にアンテナを張っていたとのこと。

「翁明窯元といえば」の可愛らしいドット柄

ドット柄の始まりは、当時店番をされていたお母様がお客さんとの会話のなかで「こういうデザインがあったらいい」というリクエストがあり、それを基に開発されたんだとか。

そのような経緯からも、うつわを使うひとに寄り添ったデザインなんだと感じることが出来ました。

お話しを伺ったなかで一番驚いたのが、「売り込みは一切しない」とおっしゃったこと。

これから本焼きされるうつわたち

「ここ(小石原)から動かない」と話される鬼丸さんの真っすぐな言葉には、小石原を背負う覚悟やうつわ作りとお客様への誠意が含まれていて、思わず引き込まれてしまいました。

小石原焼の伝統技法にとどまらず、ドット柄や四方掛けといった新しいデザインを取り込み、先駆的に見える翁明窯元ですが、うつわ作りに使っているものは100%自然なもの。

「地元で採れた原料を使い、無理矢理着色することはせず素材そのものが持つ色を生かすことを大切にする」ことをテーマにしているそう。

優しいパープルがかった釉薬の色味は、鉄分を豊富に含む土(ベンガラ)を使う事で表現されるそうです。

「商品を売る」ことではなく「素材を生かし、使う人のことを考える」ことをいつも優先されているから、力強さと優しさと新しさが共存するうつわが出来上がるんですね。

同じ素材を同じように調合しても、窯の中に置く位置によって手前と奥のように色味に違いが出てくるとのこと。

100%計算尽くしというより、このように一枚一枚に表情がつくからこそ手作り感を感じることが出来ます。

ギャラリーの玄関には息子さんが作った作品も置いてあり、ひとつ500円で購入することが出来ます。

おおかみを一匹購入して、我が家の食器棚で放牧しています。

食器棚の扉を開けると小さなおおかみがこちらをのぞいていて、ほっこりします。

こちらは翁明窯元の鬼丸さんが作られた磁器のおちょこ。

実は鬼丸さん、「陶器」と「磁器」の二刀流なんです!

最近日本酒にハマっているお話をすると、お土産に磁器のうつわを持たせてくださいました!晩酌を楽しんでいます。

売り込みを一切しないのに、スターバックスとのコラボ商品や、福岡に本店を持つピエトロレストランの料理を彩るうつわとして選ばれる翁明窯元。

伝統技法と、可愛らしくつい手に取ってしまいたくなるデザイン、そして小石原の土地に対する愛着がうつわ一枚一枚に詰め込まれているので、自然と惹きつけられてしまうんですね。

皿山地区の早川窯元へ

小石原焼発祥の地「皿山地区」。
この場所で、初期から小石原焼を支える窯元のひとつ早川窯元さんです。

小石原焼と皿山地区の歴史をご主人と奥様、息子さんが話してくださいました。

350年以上続く伝統の重みがひしひしと伝わってきます。

作業の様子を目の前で見せていただけることに!

現在15代目のご主人が入れる、飛鉋。半月状に刻まれた模様が点々と美しい螺旋を描いていきます。

使いこまれた道具。持ち手の位置によって、飛鉋の刻まれる模様の間隔が変わります。

飛鉋の技術そのものは1年ほどで身に着くそうですが、「つくりたい模様」を描けるようになるには何年もかかるのだそう。

こちらは伝統技法のひとつ「刷毛目」。

ろくろをまわすスピードと、刷毛をうつわに当てるタイミングがリズムよく合わさり、美しい模様が描かれていきます。

飛鉋も刷毛目も、熟練した人の手から生み出されていくんですね。目の前で見させていただいて見惚れてしまいました。

こちらは早川窯元の人気商品「ココット」です。

電子レンジで目玉焼きがつくれる優れもの。

手のひらサイズのうつわに、刷毛目がほどこされてとっても可愛らしいんです。

お土産にココットを持たせてくださり、毎日使っています!

特に重宝しているのが、忙しい朝!300wの電子レンジで2分加熱するだけでとろとろの目玉焼きが完成します!

ご飯をよそったりしている間に簡単に目玉焼きが出来るので、忙しい朝もしっかりご飯を食べたい派の方にぴったり。
取っ手は熱くならないので素手でうつわを持つことが出来ます。

見た目もとっても可愛らしくて、プレゼントとしても喜んでもらえそう。
うつわに触れると、指先で感じる刷毛目のぽこぽこした手触りがなんとも愛おしいです。

「アクアクレタ小石原」でランチタイム

さて、よく考えたら8時に家を出てからなにも食べないまま12時をまわり、早川さんの前でお腹がなってしまいました。

「近くにいいお店がありますよ」と紹介してくださったレストランへ向かいます!

早川窯元から車で数分、徒歩でも10分ほどの距離にあるアクアクレタ小石原。

店内の雰囲気

こちらはなんと小学校をリノベーションしたホテルだそうです。
レストラン「ふぇありお」は宿泊していない一般のお客さんも入ることが出来ます。

東峰村の食材を中心に朝倉の食材をふんだんに使った「シェフのおまかせランチ」

若鶏と村野菜のサラダ仕立て
ピーマンとスモークベーコンのパスタ
チキンソテーと村野菜のグリル

そして料理が盛られているお皿はすべて小石原の窯元のうつわ!
「〇〇窯元のうつわをお願いします」とリクエストすることが可能です。

食材もうつわもまるごと小石原を味わえる、とても素敵なレストランでした。

ホテルの中がどうなっているのかとても気になります!
今回は全体をまわることが出来ませんでしたが、また宿泊で訪れてみたいと思います。

鶴見窯のポップなうつわたち

つぎにお訪ねしたのは鶴見窯です。

小石原焼の伝統技法飛鉋に、ポップなボーダーやチェック柄があしらわれている鶴見窯のうつわ。

鶴見窯のご主人(以下和田さん)が作りだすうつわに触れると、少年のように無邪気なエネルギーが伝わってきて明るい気持ちがむくむくと湧いてきます。

こちらは印象がガラリと変わってナチュラルな色味とマットな質感。

「イメージって良くも悪くもついてしまうんですよね。鶴見窯ならではのデザインを大切にしつつ、それでもまだまだ挑戦していきたい。若い子たちが頑張っている姿を見ると力が湧いてくる」

そう語る和田さんのキラッと光る瞳や表情から、小石原の世界をもっと楽しく自由に広げていきたいという情熱を感じることが出来ました。

「鶴見窯内に設置されている体験スペース」

鶴見窯さんではロクロ体験をすることができます。(要予約)

今回お訪ねする1ヶ月ほど前に、福岡市内のイベントで鶴見窯さんが出展されていたので、そこで前もってロクロ体験をさせていただきました。

今回わたしが作ったのは、抹茶を点てるための茶碗。

生まれて初めてのろくろ体験。
マンツーマンで丁寧に教えてくれます。

指の力加減次第で自由自在に形を変える粘土と向き合う時間はとても楽しかったです。

あれから1ヶ月。
「茶碗、出来てますよ」と和田さんが持ってきてくれたのが、こちらの茶碗です!

こんなに素敵になっちゃって!
「これ・・・ほんとにわたしがつくった茶碗ですか?」と思わず聞いてしまいます。

伝統技法の飛鉋、そして鶴見窯のデザインが施された茶碗は、とても力強く美しい姿になっていました。

鶴見窯で作らせていただいた茶碗で抹茶ライフを楽しんでいます。
自分の手で作った茶碗でいただく抹茶の美味しさは格別!

どんぶりとしても丁度いい大きさなので、ご飯をよそっても良さそうです。

うつわのデザインのように、気さくで明るいご主人が楽しくお話をしてくださる鶴見窯。
とても楽しい時間を過ごし、次の窯元さんへ向かいます。

小石原の自然に囲まれたマルダイ窯

最後にお訪ねしたのはマルダイ窯です。

マルダイ窯は、2軒目にお訪ねした早川窯元のすぐお隣にあります。
こちらも小石原焼の初期から続く窯元で、現在15代目のご主人がうつわを作られています。

小石原は土・水・木に恵まれていて、その環境が小石原焼をつくり、そして今も支えているのだそう。

素材の調合や窯の焼き方を試行錯誤し、目指している飴釉の発色に近づけていくそうです。

「このくらいでいいかな」と妥協するのではなく、理想を完成させるまで努力を惜しまない姿に胸が熱くなります。

こちらは小石原に44軒ある窯元のなかでも数軒しか使われてないという「登り窯」。
この登り窯を使うことでより多くのうつわを効率的に焼くことが出来ます。

私がお訪ねした日の翌週に本焼きをする予定だったそう!
実際に使われている様子を間近で見たかった~!

マルダイ窯のアイドルりょうくん。
笑顔とカメラ目線がとっても可愛らしくてシャッターを押す指が止まりませんでした。

小石原焼の歴史を学べる伝統産業会館

次の目的地に向かう途中、小石原焼伝統産業会館を発見。

小石原焼伝統産業会館では、歴史を学んだり陶芸体験(要予約)をすることが出来ます。

時期によっては、小石原のうつわをお得にゲットできる福袋の販売もあるそうです!
ぜひ公式サイトをチェックして訪問されてみてください。

壮大な自然を感じられる行者杉

車を数分走らせて、小石原の観光スポットのひとつ「行者杉」を見に行きました。

行者杉のなかでも「大王杉」と名付けられた、幹回りが約8.3mもある巨木!圧巻です!

美しい緑につつまれて、一日動き回った疲れさえ忘れてしまいます。
清々しい空気を肺いっぱいに吸い込んで、爽やかなひと時を過ごすことが出来ました。

帰りに寄った山田SAエリアでは、朝倉醤油ラーメンをいただきましたよ

豊かな自然と伝統に触れる小石原ドライブ

実際に小石原地区を訪れて、その豊かな自然に触れることが出来ました。

350年以上続く窯元や比較的新しい窯元もありますが、どちらの窯元も真っすぐに良いうつわを目指して、日々うつわ作りと向き合っておられました。

作品として飾るだけでなく、日常の生活に馴染む温かみを持つ小石原焼。
「用の美」と称される理由を、肌で感じることが出来ました。

小石原には窯元が44つあるので、一日では時間が足りません!

「今日はここの窯元に行こう」と目的地をしぼって周ったり、今回ご紹介したアクアクレタに宿泊してのんびりお散歩しながら窯元巡りをするのもとっても楽しそうです。

小石原からは城下町のノスタルジックな雰囲気を楽しめる秋月や、通年フルーツ狩りが楽しめるうきはが近いので朝倉全体を楽しむ行程にしても良さそうです!

今回ご紹介した小石原焼のうつわは、こちらからご覧いただけます。

小石原焼 一覧ページ

お気に入りのうつわで、毎日の食卓を楽しめますように。

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