今回は沖縄の焼きもの「やちむん」についてご紹介します!
近年、やちむんの人気がすごくて、当店でも、かなりの数の作品を取り扱っています。
最近では、年に数回開かれるやちむんの陶器市を目指して旅行する人もいるほど人気です。
2022年に放送された朝ドラ「ちむどんどん」は沖縄が舞台で、「食」もテーマの1つ。
色鮮やかなやちむんに盛られたチャンプルーや沖縄そばが登場するので、それをきっかけに興味をもったという方も多いかもしれませんね!
やちむんとは、沖縄の方言で「焼き物」のこと。
沖縄の家庭で今も日常的に使われている茶碗や飯碗、鉢や平皿などの陶器を指す言葉です。
ぽってりと厚みがあるものが多く、どっしりとした面構えなので、大皿にどんと盛りつけた料理が似合います。
今回は、力強い絵付けと厚みが特徴のやちむんの作風と人気の作家さんをご紹介します。
沖縄の作家さんの作品はこちらからご覧いただけます。
また、やちむんの買付けの様子についてもこちらの記事にまとめていますのでよろしければどうぞ。
それでは、やちむんについてもっと詳しく知ってみたくなったという方向けに、特徴や作家さんなどを紹介します。
目次
やちむんの特徴は?
あざやかな色使い
『やちむん』の一番の特徴は、絵付けの鮮やかさと躍動感のあふれる模様です。
色は、沖縄の青い海を彷彿させるようなコバルトブルーや、棕櫚の木、南国の植物を思わせる緑(オーグスヤ)。
またこれらの色と対になる茶色(飴)が多く用いられます。
特徴的な紋様
のびのびとした唐草模様や、印花(イングァー)と呼ばれる模様がうつわの上に踊ります。
点打という、手描きの丸模様が乗ったものも象徴的なモチーフです。
やちむん?やむちん?沖縄ならではの呼び名とその意味は?
「やちむん」は少し聞きなれない言葉なので、「やむちん」と間違えやすいのですが、
沖縄の言葉で
やち=焼、むん=物
を意味します。
つまり「やちむん=焼き物」となり、沖縄で作られる焼き物が広く「やちむん」と呼ばれます。
他にも、碗やどんぶりは「マカイ」と呼ばれ、さまざまなサイズが作られています。どんぶりは、そばマカイと呼ばれることが多く、『沖縄そば』を食べる沖縄ならではだな、という感じがしますよね。
また、本土ではあまり見る機会がありませんが、抱瓶(だびちん)と呼ばれる、
泡盛を入れる容器や、カラカラという酒器など、沖縄ならではのうつわもあります。
思わず深呼吸したくなるような、沖縄のおおらかな空気をまるごと伝えてくれるやちむん。
そんなお皿が一枚あるだけで、いつもの食卓がパッと明るく華やぎます。
伝統的なやちむんが楽しめる作家
やちむんらしいモチーフや、色使いを楽しめる作家さんをご紹介していきます。
伝統的なやちむんには、沖縄が持つあたたかな気候のパワーや、陽気な気持ちを与えてもらえるような力があります。
陶眞窯
陶眞窯さんの作品は伸びやかな唐草模様が特徴的です。
また、赤絵付けという赤い色の入ったうつわもあり、品のある印象を受けます。
陶眞窯は、相馬正和さんが壺屋の「育陶園」にて修行後、作られた窯です。
壺屋焼の伝統技術を守りつつ、独特の赤絵や染付け、魚紋、イッチンなど「常に新しいものを」を合言葉に新たな作品をつくり続けています。
ノモ陶器製作所
美しいオーグスヤ(緑)の絵付けが特徴的。
ゴーヤチャンプルーなどの沖縄料理はもちろんですが、ボンゴレなどのパスタ料理なんかを盛りつけても面白そうです。
釉薬の調合から成形、仕上げ、焼成まで全ての工程を1人でこなすのだそうで、本当にすごいなと思いますね。
青陶舎
柔らかな絵付けが魅力の青陶舎さんのうつわ。
じんわりと滲む釉薬はまるで水彩墨のようです。
北中城の荻道で「焦らない。あきらめない。よんなーよんなー。」をモットーに、毎日の生活を大切に楽しく、そして時おり命への感謝に心が届く焼き物作りを目指されています。
陶芸こまがた
唐草模様も作家さんが違えば、違う印象に。
奥に移っている、呉須と飴色の茶碗はデイゴの柄です。
小さな楊枝立ても可愛らしいですね。
また、こまがたさんの点打ちは、小さな点が2つ連なっているもので、他にあまり見ないデザインです。
mug
mugさんのやちむんは、 落ち着いた色合いに、女性らしい絵柄、渋くて可愛いさじ加減がたまりません。
連なるドットは泡のようにも見えます。
個性的なやちむんが魅力の作家
近年、沖縄で活動する作家さんは、従来のやちむんのスタイルにとらわれず、自由な作品作りをされている作家さんが多数いらっしゃいます。
その作品は、他にはない唯一無二の雰囲気でありながらも、どこか沖縄の雰囲気を感じさせてくれる作品ばかりです。
一翠窯
鮮やかな青や、規則正し描かれた、丸模様や格子模様。
ハッとするような絵付けや色使いの長角皿を中心に作られています。
また、うちる編集局が一翠窯さんの工房を訪ねた記事もあるので、こちらから読んでみてくださいね。
心を解き放つ、自分だけの沖縄・やちむんを探して【うつわ巡りの旅vol.10】
atelier qucchane
アトリエの名前は“食っちゃ寝”から、「人間が生きていくうえで必要不可欠な“食べて寝る”という行為を大事にしてほしい」という思いから名付けられたそう。
「笑顔になるうつわライフ」をテーマに、カラフルでポップなうつわたちがずらり。
見ているだけで楽しくなってくるような作品です。
土の種
母娘二人で作陶されている土の種さん。
「うつわを手にしてくださった方が、ほっこりと笑顔になってくれたらいいなと想いながら、親子で作陶しています。」という想いで作陶されています。
動物のモチーフがとってもかわいらしくて、使う度にっこりしてしまいます。
自分の「好きなこと」を大切にして、とことん前へ突き進むお二人の作品は、可愛らしさの中に信念のような力強さも感じられますね。
土工房 陶糸
海や、泡、星など、自然がモチーフ。
手描きならではの、模様や絵付けの味わいを感じられます。
色も鮮やかで、使うときにワクワクしそうな器ばかりです。
エドメ陶房
沖縄の中心の那覇からは、車で3時間ほど離れた今帰仁というところで、窯を構えています。
自然豊かな静かな土地で描かれる花やドットの模様に心癒されますね。
工房双子堂
工房双子堂さんの作品をはじめてみた時は、「まさにお皿がキャンバスになっている!」と感動しました。
カラフルな絵付けは、すべて手描き。
描かれる絵も毎回違うものが登場します。
アートを感じられるお皿でごはんが食べられるというのは、なんとも贅沢な気持ちになります。
南陶窯
南陶窯さんの作品は、鮮やかなペルシャブルーのうつわと幾何学な線模様のうつわがあります。
全く違う2つの方向性の作品は、どちらも個性的で、惹きつけられるものがあります。
また、カップやボウルの足が3つ足や5つ足になっていたりと、チャーミングな形も魅力です。
工房ことりの
トリがモチーフになった作品が数多くある、工房ことりのさんの作品。
まるでファンタジーの世界にいるような可愛らしい作品が目を引きます。
土の質感や、カップなどのフチに入った飴色の釉薬が器の雰囲気を締めてくれているので、食卓でも使いやすく実用性も高いです。
やちむんだけじゃない、琉球ガラスの魅力
琉球ガラス、ってご存知ですか?
沖縄では、吹きガラスで作られるコップやガラス製品などがあるのですが、これもとても美しい作品が多くあります。
空きビンをリサイクルして作るため、そのビンの色がガラスに入り、薄い水色になったり、黄色になったりするのも面白いです。
ガラス工房清天
ぽってりとしていて、やや厚みがありますが、涼し気な印象を与えてくれるのは、その質感にあります。
清天さんのガラスの中には、小さな気泡が混じっていて、それによって、水のような滑らかな質感を感じられます。
光に当たるとうっすら緑がかって見えるのは琉球ガラスならではです。
奥原硝子製造所
こちらもぽってりとした質感のガラスと、フチに緑や茶色の色が施されています。
またねじれたような模様が水の流れを感じられて涼しげで、夏のうつわにぴったりです
はじめて買う方におすすめのやちむん
やちむんについて簡単にご紹介しましたが、どのようなやちむんから購入したらよいのか悩んでいる方もいらっしゃると思います。
そこで、はじめてやちむんを買う方におすすめしたいのが、華やかな柄の大皿です。
7寸~8寸(約21cm~24cm)の大皿
大皿は、なんといっても「やちむんらしさ」を味わえるのが魅力。
沖縄料理には、チャンプルーや角煮など、どーんと盛りつけたくなるようなお料理が多いので、やちむんの大皿は1枚持っていると重宝します。
色鮮やかな絵付のお皿が、茶色ぽく地味になりがちな煮物などの家庭料理を引き立ててくれ、普通の白いお皿に盛ったときよりぐっと華やかに。
円形に並べた餃子をのせても絵になりますよ。
7寸皿 赤絵ブーゲンビリア 陶器 壷屋焼 陶眞窯
ブーゲンビリアのお花をモチーフにした絵柄が、お料理を引き立ててくれること間違いなし。
お皿に深さがあるので、汁気の多い角煮なども盛りつけられますよ。
7寸皿 線彫唐草 陶器 青陶舎 やちむん
土の質感が残るグレーがかった素地に、飴色と青が映える唐草模様。
彫に溜まった釉薬の濃淡が、味わい深い雰囲気です。
やちむんは欲しいけれど、何を買えば使いやすいのか、食卓が素敵に見えるのかわからない!
というときは、思い切って大胆な絵柄の大皿を取り入れてみるのがおすすめです。
やちむんを買えるお店
やちむんの里
沖縄のやちむんが一堂に会する場所といえば、那覇市から車で1時間ほどの読谷村にある「やちむんの里」。
観光名所にもなっており、外国人観光客の方も数多くいらっしゃいました。
ここには、19の工房が集まっており、先ほど紹介した、北窯や、有名な工房がいくつもあります。
一軒一軒、窯を訪ねるようなスタイルで、窯ごとに特色が違うため、それぞれ見比べるだけでもとても楽しめます。
伝統的なやちむんの作品や、写真のような大きな登り窯も見ることができます。
壺屋やちむん通り
那覇の国際通りからも近くの壺屋やちむん通りでは、 45の窯元やショップ、カフェなどが並んでいます。
オシャレなお店やカフェなどもあり、そこでセレクトされているやちむんなどを買って帰ることができます。
やちむんの里まで行く余裕はない、という方はこちらに立ち寄っても楽しめますよ。
やちむん市(沖縄の陶器市)
ムーンビーチおきなわ全島やちむん市
毎年3月ごろに開催される、沖縄最大級の陶器市。
沖縄全島に点在する窯元が一同に会するため、県内の若手作家から歴史ある窯元が集い、それぞれ味のある作品を見ることができます。
会場は屋内なので、快適にじっくりと見てまわれます。
読谷やちむん市
毎年12月に、やちむんの里の近くで行われる、読谷やちむん市。
通常よりも安く買えることもあって、2日で約2万人の方が訪れます。
人気の窯元の商品は、開場後すぐに売り切れてしまうこともあるため、計画してまわることをおすすめします。
やちむんの歴史
やちむんの原点は1600年、まだ沖縄が琉球王国と呼ばれていた時代と言われています。
薩摩から琉球王国に朝鮮人の陶工3人が陶芸の技術指導のために訪れ、現在のやちむんの基礎を築きました。
その後1682年には、琉球国の尚貞王が県内各地の陶工たちを壺屋に集めたことで「壺屋焼」が始まり、王府への献上品としても利用されて発展します。
明治時代になると、本土から安価で丈夫な磁器製品が大量に流入するようになり、壺屋焼は次第に衰退の危機に。
しかし、1926年頃に起こった「民藝運動」によって日用品としての美が認められ、柳宗悦をはじめ、濱田庄司、河井寛次郎などの陶芸作家が本土に紹介したころで、やちむんは全国各地に広まっていきました。
ここからは、やちむんの色々な作家さんをご紹介していきます。
代表的な窯元「読谷北窯」4人の作家
やちむんの中でも特に有名なのが、「読谷北窯」と呼ばれる窯元。
松田米司さん、松田共司さん、與那原正守さん、宮城正享さんの4人の名工による共同主催窯です。
あまり入荷も多くなく、都内のショップなどでは入荷と同時にすぐに売り切れてしまう人気作家さんたちです。
読谷北窯 松田米司さん
藍、緑、茶といった伝統的な色を使った、優しいタッチの絵付けが特徴。
手持ちの食器とも合わせやすいので、銘々皿はもちろん、カレーやどんぶりなどのごはんものを盛り付けるのにもぴったりです。
読谷北窯 松田共司さん
松田米司さんの双子の弟である共司さん。
伝統的な色、模様でありながら、はっきりとした色合いと力強いタッチが魅力的。
大きな鉢にたっぷりとおかずを持って食卓の真ん中に置くのもいいですね。
読谷北窯 與那原正守さん
沖縄の海の色を写したような、美しいペルシャンブルーの釉薬を用いた器が特徴的。
一見上級者向けに思える鮮やかなブルーには、焼き菓子などのブラウンを入れるとコントラストがはっきりして、とても美味しそうに見えます。
読谷北窯 宮城正享さん
宮城正享さんの作品は、やちむんらしいモチーフのものが多く、自然でいて力強さも感じられます。
特に使いやすさに定評が高く、食卓に並べてわかる良さがあります。
やちむんが気になった方は?
それは、沖縄の自然が持つパワーと、沖縄の人の陽気さや明るさが、うつわに宿っているからなのかなと思います。
やちむんには、人の心を元気にさせてくれる魅力があるように感じます。
沖縄に行った際には、ぜひ、色んなやちむんを見てみてください。
また、やちむんのおすすめについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
・“やちむん”のおしゃれなテーブルコーディネート実例24選
・ダイナミックな魅力を感じる、やちむんのマグカップ12選
・沖縄の自然を感じる! やちむんのマカイ(お茶碗)10選
また、当店は、”おうちにいながら陶器市を楽しめる。”をコンセプトに、全国の陶器市やクラフトフェアから、『この人は!』と思った作家さんのうつわを取り扱い、販売しているお店です。
沖縄全土をまわって様々な作家さんを取り扱っており、今回ご紹介した作家さんも販売しています。気になった方は下記のリンクから見てみてください。
それでは、最後までご覧いただきましてありがとうございました。皆さまがよい作品と出会えますように!
おうちで楽しむ陶器市 うちる